hachimitsu

あまくて少しにがい日々

性の成れの果て

寝ても醒めても岡村靖幸な毎日。仕事が退屈だからという理由で彼の過去のインタビュー記事を読み漁っていたところ、「あぁ、だからこんなにも彼のことが好きなのね」と実感してしまった。

あの性欲でやっているのかと思うときがあるんですよね。つまり救われたいんじゃないのかなと。自分の親と同じ人とやって・・・・だってその人たちだってキムタクキムタクって騒いでいるわけですよ。なのに、体を許すわけですよ、自分のお父さんとおんなじようなひとに。
そこに性欲だけじゃない、さっき言った孤独感を癒してもらいたいとか、例えば、親に愛されなかった記憶があるとかそういうものを癒してもらっているとか・・・・・もうちょっと僕調べないと分かりませんけど。なんか前は『安い奴らだな』とか思ってましたけど、今はもうひと考えしなくちゃなと思っているんですよね。

サブカルのすすめ - インタヴューれぽNO3

 恥ずかしながら、わたしは寂しさで異性に身体を許した……否、こちらから求めた経験が何度もある。昔は「身体を重ねればいつか自分を好きになってくれる」「このまま愛し(ているフリを)続けてくれる」と馬鹿のようなことを思っていたし、本当につい最近までは誰にも愛されなくていい、けれど寂しさをどうにかしたい、という一心で色んな男の人と会っていた。きっと誰かに愛されたい気持ちはあったのだろうけれど、それ以上に裏切られることが怖かった。若くて可愛いうちは色んな男とセックスをして、誰にも構ってもらえなくなったら適当に死んでしまえばいい、本気でそう思っていた。

なんやかんやあって、現在の好きな人と出会う。最初のわたしといえばひどいもので、ひたむきにアプローチを続ける彼に対して「わたし、誰も愛さないから」「他の人との関係も持ったままにするね」なんて平気で言っていた。それでも彼は健気にわたしのことを愛してくれたわけだが、よく「つまらない男に会わないでね」と言われるたび、ツマラナイ男ってなんだろう?と純粋に考えた。今思えば、当時会っていた中では彼以外は全員ツマラナイ男であった。そんな簡単なことにも気付かないでいた自分が恐ろしいくらいに。気付けばわたしは彼の手中に収まっていた。今後のことなんて分からないが、最後に傷付けられるならこの人がいい。だれかを愛し合うためのきっかけなんて、そんなシンプルなものでいい。(余談だが、この頃の彼は初期の岡村靖幸っぽさがあってとても良い。「僕の方がいいじゃない」って何度も思ってたんだろうなと考えると、愛おしい……ノロケ。)

複数の男性と関係を持つ中でよく言われたことは「セックスが好きなんだね」であった。どんな人に抱かれてもいいなんてエッチな女の子だね、と言われるたび、愛想笑いを張り付けながら冷めていく自分がいた。どれだけ顔がタイプでもお金持ちでも、気持ち悪くて仕方なかった。そいつとの適当なセックスを済ませたらシャワーも浴びず家に帰り、LINEをブロックした。こんなわたしのこと分かってくれる人なんていないと思っていたし、「君のこと理解してあげるよ」なんて言いつつ性欲丸出しな男はもっと気持ち悪かったし、全員死ねばいいといつも思っていた。あのときのわたしは間違いなく死んでいた。「誰とでもエッチがしたい女の子」なんて男にとって都合が良すぎる女なんて存在しないに決まっているだろ。そりゃあ不安や恐怖をどうにかするために好きでもない相手とセックスをしてしまう女の子はごまんといる。それを「メンヘラ」とだけ軽蔑して、誰にも寄り添わないくせに誰かに愛されたいと求め続けている男の方がよほどくだらなく思えるし、一生だれにも愛されないと思う。

そんな男がうじゃうじゃいるくだらない世の中だからこそ、女の子の純粋で汚い承認欲求に親身に寄り添ってくれる人は一層光って見えるし、そんな男ならすべてを分かってあげたいと思える。「できるだけ純情でいたい」みたいな、いくら熱い夜を過ごしたとしてもなぜかウジウジとしてしまう男ほど愛おしいものはない。この先何かが起きて一人で生きていかなければならなくなっても、岡村靖幸の楽曲だけはずっとわたしに寄り添い続けてくれる。曲中ではエッチな男のふりをするくせに、「セックスだけじゃないよ」「僕を理解してほしい」と訴え続ける彼の声に、あの頃寂しさを埋めようと必死だったわたしの片鱗が見える。とはいえ女の子に対して「寂しい気持ちわかるよ」なんて知ったフリをするわけでもなく、「うーん、もう少し考えなきゃな」と一人でうじうじ考える彼みたいな人、こんな人をパートナーに出来たら世の中の女の子はもっと幸せになれるだろうに、なんてお節介なことを考える。そんな岡村靖幸に出会ったきっかけは「好きな人からカルアミルクを教えてもらった」というこれまたベタなものであり、彼と出会わなければわたしは前述のとおり岡村靖幸の楽曲を知らないまま35歳くらいで酒に溺れて死んでいただろう。人生ってこんなにも容易く輝かせられるものだったのかと、わたしは彼に魅了され続けている。